新勉強法??

 
 ブログに勉強の事を載せてみようと思います。今日は国語で。

 
 【一塁手の生還】赤瀬川隼(あかせがわしゅん)さんの作品です。
  
 
 

 家の前の細い路地で、素手のキャッチボールが始まった。


 ボールは格段に重く硬くなっている。痛い。途中で二人とも軍手を

 はめた。


 (中略)


 ぼくは野球があまり得意でなく、好きでもない。なにしろ、


 土蔵の書斎暮らしだ。


 ――こんなふうにして、一範兄と、特攻隊で戦死した兄と、


 病気で死んだ兄とで、この場所で、キャッチボールを


 やってたんだな。ぼくはだんだん、ボールに託して一範兄と


 会話しているような気分になる。ぼくは力いっぱい投げる。


 ――兄さん、潜水艦に沈められてなかったら、テニヤンで玉砕


 してたところだったね。ボールが返ってくる。

 ――そうだ人間の運命なんてわからん。

 
 ぼくはその「言葉」を受けてまた返す。


 ――捕虜の生活って、どうだった?

 
 兄がそれを受けて返してくる。――簡単に話せるもんか。

 
 今度は兄が「言葉」を投げてくる。


 ――おやじの遺骸は出てきたのか。

 ぼくはえいっとばかりに返す。


 ――うん、真っ黒焦げでね。


 ――兵器廠では女学生は何人死んだんだ。

 
 ――七十人って聞いた。そんなに力いっぱい続けて投げて
いいのかと思うほど、しゃにむに投げてくる。まるで何かに怒っているみたいだ。


教育出版発行『中学国語 伝えあう言葉③』より引用いたしました。